「人を大切にする会社」津田屋の働く環境の整備
津田屋では、社員がより働きやすい環境を実現するため、大規模な人事制度の改革を行います。この取り組みは、「変化に対応できない企業は生き残れない」という強い危機感から生まれたものです。
制度改革を指揮した総務部長の阿部さんに、改革の背景や込められた想い、具体的な変更点などについて話を伺いました。
PROFILE

阿部 一毅
総務部長
変化を続ける津田屋、新たな人事制度へ
――まずは、今回、大規模な人事制度の改革に至った経緯を教えてください。
津田屋は、常に変化に対応していくという強い信念を持っており、会社の制度面でも毎年さまざまな見直しを繰り返しています。私自身も、現状に満足することなく、さらなる改善を目指し、日々取り組んでいます。
近年、人材確保が難しくなる中、採用強化はもちろんのこと、企業の魅力を高めることが重要だと考え、今回の大規模な制度改革に至りました。特に、社員がやりがいを感じ、成長できるような人事制度の構築に力を入れています。
現行の人事制度は12年前に設計されましたが、それ以前の制度は、明確な等級制度がなく、年功序列色が強かったため、社員のモチベーションを高めにくい部分がありました。会社全体の業績や個人の貢献度と必ずしも結びつかない制度だったため、不公平感を感じる社員も少なくなかったと思います。
そこで、当時新たな人事制度の構築に取り組みました。新たに「職能等級制度」を構築すると同時に「報酬制度」、「評価制度」も刷新し人事制度全体を整えました。
そこから毎年改善を重ねながら運用してきましたが、未だ残る年功序列色の問題と、先ほども述べたように近年の人材難といった社会の変化もあり、制度を再度大きく変化させる必要性を感じ、取り組むことになりました。
社員のモチベーション向上につながる!新しい人事制度のメリット

――具体的にどのような点が変わりましたか。
今回の制度改革では、従来の職能等級制度から、役割等級制度へと大きく転換します。
従来の職能等級制度は、社員の経験年数や年齢をベースに等級が決まるものでした。つまり、長く勤続している社員ほど高い等級に位置付けられ、給与も高くなるという仕組みだったのです。この制度では、社員の能力や実績が必ずしも反映されないという課題がありました。
もちろん長年勤続している社員の存在はありがたいですし、尊重していくのは当然です。とはいえ、勤続年数と能力は必ずしも比例しているとは限りません。また、一度上がった等級や給与を下げることは非常に難しく、社員の能力が見合わなくなった場合も、それを反映することが困難でした。
そこで、私たちは、社員の役割に焦点を当てた新しい人事制度を導入することにしました。この制度では、各等級に求められる役割を明確にし、社員がその役割をどれだけ果たせているかを評価します。
例えば、中途入社で高い等級に配属された社員が、ある期間その役割を十分に果たせなかった場合は、より低い等級の役割に異動してもらうことがあります。これは、その社員の能力が低いということではなく、現在の役割に適していないという判断に基づいたものです。
逆に、若手社員であっても、高い等級の役割を十分に果たせる能力があれば、その等級に昇格することも可能です。この制度では、年齢や経験年数ではなく、社員が実際に担っている役割と、その役割をどれだけ遂行できているかが評価の基準となります。
今回の制度改革では、社員の能力をより客観的に評価し、公平な人事評価を実現することを目指しています。社員一人ひとりが自分の能力を最大限に発揮できる環境を整え、会社全体の活性化に繋げていきたいと考えています。
社員が主体的に働きやすい環境を創る
――今回の制度改革にあたり、重視しているポイントや大切にされている考え方について教えてください。
新しい人事制度を成功させるために、さまざまな立場の人々が集まるプロジェクトチームを発足させました。このチームには、経営層から現場の店長まで、幅広い層の人が参加しています。
プロジェクトチームを作った理由は、新しい制度を単に上層部で決めて一方的に押し付けるのではなく、全社員が主体的に改革に関わることを目指すためです。
今、津田屋で働いている社員は、みんな仲間です。やはり仲間には良い思いをしてほしいですし、今後も一緒に働いてほしいと強く願っています。社員一人ひとりが、人事制度について理解し、自分事として捉えることで、よりスムーズな移行と、制度の定着を図りたいです。
プロジェクトチームのメンバーは、それぞれの持ち場で活躍しているだけではなく、新しい制度に対して熱意を持ち、積極的に意見交換ができる人々で構成されています。例えば、あるメンバーは、新しい制度の設計に長けた能力を持ち、別のメンバーは、現場の社員の意見を代弁する役割を担っています。このように、多様な視点を持つメンバーが集まることで、より良い制度を作り上げられると考えています。
大きな変化に痛みはつきもの。課題を乗り越えるための鍵とは?

――今回の制度改革にあたり、感じた課題について教えてください。
今回の制度改革は、会社全体にとって大きな変化であり、全ての社員がスムーズに新しい制度に移行できるよう、さまざまな工夫を凝らしています。しかし、人それぞれ価値観や働き方が違うので、新しい制度に対して不安や抵抗を感じる人もいるでしょうし、必ずしも全員が賛同するとは限りません。
会社をより良い方向へ発展させるというビジョンのもと、丁寧な説明と、一人ひとりの納得性を高めるための努力をすることで取り組みを推進していければと思っています。
そのためにプロジェクトチームを発足し、長年付き合いのある外部のコンサルティング会社と連携しながら新しい制度を構築してきました。
その際、津田屋の良さでもある、社長をはじめとする経営陣の協力体制の強さに助けられました。社長が率先して旗振りをすることが、こういった制度改革には不可欠です。自ら先頭に立って引っ張ってくれるので、心強いですね。
制度改革を経てより良い組織づくりへ
――会社として働く環境をより良くすることで、どのような変化が生まれることを期待していますか?
従来の職能等級制度から、役割等級制度へと移行することで、社員一人ひとりがより明確な目標を持って仕事に取り組めるような環境を目指しています。
従来の制度では、各等級に求められる人物像が曖昧で、社員が何を目標にすれば良いのか、具体的なキャリアパスを描きづらいという課題がありました。
新しい制度では、各等級ごとの役割を明確にし、社員が自分の目標を定めやすくしました。これにより、キャリアパスを考えやすくなり、将来設計にも役立ちます。
また、例えば、ある社員が目標達成のために努力し、昇格を果たした場合、他の社員もその姿を見て、自分も頑張ろうというモチベーションが向上するといった良い影響も期待できます。
新しい制度で社員の成長をサポート
――他にも導入を検討している制度や福利厚生があれば教えてください。
新しい人事制度の導入だけでなく、社員の成長を支援するための様々な取り組みを計画しています。
例えば、退職金制度の見直しとして、企業型確定拠出年金(DC)制度の導入を検討しています。DC制度の導入により、社員が、自身の将来設計に合わせて資産形成を行えるようになります。それに伴い、金融リテラシーを向上させるための研修会も実施していきたいと考えています。
また、従来の教育制度は、会社が用意した研修プログラムを受講するという形が一般的でした。人事制度の変更に際し、教育制度も求める成長過程に即したものにしていきたいです。
新しい制度では、社員一人ひとりが、自分のキャリアパスを明確に描き、その目標達成のために必要なスキルを身につけられる、よりきめ細かい教育体制を構築します。
社員が自ら学び、成長できる環境を整備することで、社員一人ひとりが、自分のキャリアを主体的に考え、会社とともに成長していけるような風土作りを目指していきます。
変化に対応する組織へ、津田屋の挑戦は続く

――今後さらに強化・改善したいと考えているポイントはありますか?
まずは、今回導入した新しい人事制度をしっかりと定着させ、同時に、津田屋が大切にしてきた「人を大切にする会社」という理念をより一層具現化できるよう、今後もさまざまな制度の改善に取り組んでいきたいです。
会社が制度面で柔軟に対応することで、社員一人ひとりが柔軟な発想と行動力を養い、意識改革につながり、ひいては組織全体の生産性向上に貢献できると考えています。
今後、社会の変化に迅速に対応するため、DX化やAIの活用による業務効率化など、より働きやすい環境づくりに積極的に取り組んでいきたいです。